2019年5月16日木曜日

教えて 伊勢の みやこ鳥

はい。こんにちは。
寝るは極楽、働くは地獄の、うさです。

今日の一首は、伊勢物語の中の在原業平の歌ですよ。

・名にし負はば いざ言問はむ 都鳥 わが思ふ人はありやなしやと

読み方は、

・なにしおわば いざこととわん みやこどり わがおもうひとは ありやなしやと

ミヤコドリというのは、ユリカモメの別名だとか。


せっかくの伊勢物語なので、今回は、趣向を変えて、
うたものがたり風に解説です。
本物の伊勢物語よんだことないので、すべて、
うさの妄想で作ったフィクションですからねー
実在の人物とは関係ありません。
もちろん、時代考証なんてものはありませんよ。

でわ、うさの伊勢物語第九の段、始まります。

***

左遷されて東国の任地を目指しております業平様達の御一行。
今日は隅田川にやって参りました。

「この先に、川の渡し場がごさいますれば、船にお乗りになっていただくことになります」
惟光よ、お前はなぜに東の国にそんなに詳しいのだい?
業平様はこの旅の中、お供の惟光の東国情報の豊富さに違和感を募らせていたのです。

「おっちゃん達、乗るの、乗らないの?水が怖いの?怖くねぇって、
隅田の流れは、三国イチの穏やかさ、てめぇの母ちゃんだつて、
沈めりゃ黙るつてもんさぁ」
まだまだ子供の船頭が、業平様達に声をかけます。

お供の1人が、船頭となにやら話こみ、やがて
御一行は船に乗り込みます。

「♪ハァー 智に働きゃぁー角が立つぅー 情に棹さしゃ流されるぅー チョイナチヨ、チョチョイナチヨー」
船頭の小僧が、調子はずれな舟歌を唄いながら漕ぎますと
小舟は静かに川面を滑りはじめました。
周りには、赤い嘴をした鳥たちが、何羽も飛び回っております。

「ふむ。確かに、これは、穏やかな水面ですね」
業平様は、行く景色を愛でていらっしゃいましたが、
船の辺りを飛び回っているのと同じ鳥たちが、対岸のの川辺や川の中洲にも
群れていることにお気づきになられます。

「殿、あの鳥は、ミヤコドリといいまして、隅田川じゃ、ちっとした名物って
もんでさぁ」

だから惟光、お前はいつから江戸っ子になったのかね。
てか、エスパーかよ。いま、私の心を読んだよね?
そんな心うちは微塵も見せず、業平様は、頷きます。

「ふむ。毎年の宇治の遊びでは、私の笛の合奏に、女房達が喝采をくれたものだが。
今では、船頭の唄いに鳥の聴衆か。遠くへ参ったものだ」

ぴぃ。

業平様の自嘲に惹かれたのか、一羽の鳥が船縁に止まって一声鳴きました。

「おお、おまえは私の心がわかるのかい?」

きゅうう。ぴぃ。

興に乗った業平様は、一首詠まれます。

「ミヤコドリという名前なのだから、京の都のことにも詳しいのであろう?
では、質問するよ。私の愛しいあの人は、今も元気にしているのだろうか?
教えてくれよ、都という名の東の鳥よ」

お供の方々は、お歌を称えるのも忘れ、しんみり黙り込んでしまいました。
お調子者の惟光もいつにない神妙な面もちです。
みなさまそれぞれ京には色々思い残すことがあるようですね。

ぴぃ。
鳥には人の心は分かりません。ひと鳴きして飛び立っていきます。

「♪意地ぅをう通しゃァきゆーくつだぁー、
      とかくぅをう 人のぉ世はぁ住みにくぅぅいいー」

船頭の歌と都鳥の鳴き声の中、船はしずしずと進んで参ります。
あずまの国の空は今日も蒼く広がっております。

***

ここまで。

でわでわ。ぴょんか。むきぅ。



























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